暑さ・台風・大雨なんかには負けないぞ。でもとりあえず大岩には登ってみたい。

トライアル事始

トライアルの発祥

 トライアルの発祥は、スコットランドであるといわれています。スコットランドとは、イギリス(大英帝国)北部の荒涼たる大地を持つエリアで、SSDT(スコティッシュ6日間トライアル)が開催されることでも有名です。
スコットランドが発祥の地といえば、ゴルフもスコットランドが発祥の地らしいです。エジンバラから1時間ほどのところにある「セント・アンドリュース」なるゴルフ場がその発祥の地で、なんでもウサギが海岸の砂浜に開けた穴に、羊飼いが玉を入れるところから始まったといいます。時に1400年頃の話だそうで。
 トライアルが発祥するのは、産業革命が起こってオートバイがこの世に生まれたのちですから、ずっとあと。SSDTが最初に開催されたのが1909年。フランスで最初のオートバイレースが開催され、FIM(国際モーターサイクリスト連盟)が結成されたのが1904年ですから、最初のトライアルは、モーターサイクルの歴史のごく初期に開催されていたことになります。そしてこの当時のSSDTは、ゴルフの発祥地であるエジンバラをスタート&ゴールとしていたのでした。
 ただし、トライアルが現代のような、足つきや失敗を減点と数えるという競技形態ができたのは、もう少しあとになってからのことでした。発祥当時のトライアルとは、まさに「トライアル」のことばの意味の通り、ライダーとモーターサイクルの試験そのものだったのです。
 当時のモーターサイクルは故障が多く、エジンバラから荒野に出かけ、無事に帰ってくれば、それだけで試験に合格という名誉がありました。
 しばらくすると、モーターサイクルの信頼性があがって、帰ってくるだけなら誰でも帰ってこれるようになると、勝敗を決めるルールが生まれます。このとき、スピードを競う一派と技術の正確性を競う一派とが、トライアルから枝分かれしていきました。前者は、その後エンデューロとして定着し、もちろん後者はトライアルとしてわれわれの前にあります。
 エンデューロのクラシックイベントとして、ISDE(インターナショナル6日間エンデューロ)というイベントがありますが、これは、1980年代までISDTと呼ばれていました。最後のTはトライアルです。時間の正確性を競うトライアルが、エンデューロと名を変えていった歴史が、ここにあります。
 日本では、減点法によるトライアルが唯一の存在として君臨していますが、発祥の地のイギリスでは、もう少しいろんなトライアルがあります。セクションを2名のライダーが競争したり、時間設定が極端に厳しく、そうとうにスピードを重視しないと走りきれないもの、いろいろです。むずかしい言い方をすると、今、世界選手権や全日本選手権で一般化しているトライアルは、そうした広義のトライアルの中のひとつである「インディビディアル・オブザベーション・トライアル」と称されます。立会人の元、個々が受ける試練、という意味合いでしょうか。
 発祥の地のことばでは、トライアルはTRIALSと表記することが多いようです。TRIALは個々の試験で、いくつものセクションを走破するからTRIALSになるのか、それとも別の理由なのか、定かではありませんが、通常の試験や試供などと区別するのに、TRIALSという表記は悪くないかもしれません。
 フランス、イタリア、スペインなどのラテン語系では、TRIALはトリアルと発音します。日本では、トライするという意味の「トライやる」だと信じている人がときどきいるようです。発祥や正しい発音がわからなくても、トライアルの楽しさがわかっていれば、それでOKです。

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