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year2006 , スコルパ

スコルパ250Fとロングライド

 今年は、スコルパ関連のニュースが盛りだくさん。
 黒山健一のスコルパ入りに始まり、マルク・フレイシャがスコルパ入りしたと思ったらベータに再移籍など、忙しい。
 今度は、96年世界チャンピオン、マルク・コロメがスコルパのアドバイザーとして契約したというニュースがはいった。
 期待の4ストロークニューマシン、スコルパ250Fに、大きな燃料タンクを装備した250Fロングライド、さらにトライアル普及の切り札となるやもしれないスコルパ125Fロングライドについて、現状の情報をまとめてみました。


 まず、日本GPで展示されたSY250Fロングライドについて。
 写真は日本GPで展示されたSY250Fロングライド。大きめの燃料タンクに厚めのシートがついた仕様。タンクが後方に延びているのとシートがついたことで、シート高はかなり高い。もちろんトライアルマシンとしてシート高が高いのであって、通常オフロードマシンとしてみたら、シート高はうんと低い部類には入る。ただしこのタンクは、まだ実用的なテストをおこなったものではないようで、金曜日の朝に展示車だったSY250Fのタンクと付け替えるかたちでロングライドの展示車が完成していた。

 意表をついた仕様だったのがリヤの保安部品関係。プラスティック製のアームの先に保安部品がまとめてつけられていて、そのアームはスイングアームにボルトオン。これは、ロングライドでないSY250Fにも共通の仕様のようだ。簡単にはずせるから便利だと、スコルパ社長のフィリップさんはご自慢。この仕様でそのままトライアルライディングをしたらどうなってしまうのかは考えたくないが、そういう目的で作られた保安部品ではないようだ。
 日本では、トライアルマシンの保安部品の形状などが、少しずつ常識的になりつつある。ヨーロッパでは、トライアル大会の場合は保安部品はかなり融通の利くかたちで大目に見てもらっているようだが、本来オートバイの規制は、日本以上に厳しい。スコルパはトライアルマシンとしての性能を追求する一方で、ヨーロッパの規制にのっとった仕様を実現しようとしているのかもしれない。つまりスコルパ250Fのオーナーになったら、スイングアームから伸びる保安部品をつけて日常の足として走り、リヤフェンダーに小さな保安部品をつけてトライアル大会に出場し、保安部品をいっさいはずしてクローズドのコンペティションに参加するということになる、のかな。
 エキパイの上、エンジンの横にあるのは燃料ポンプ。負圧を利用したもので、燃料の安定供給のためのものと思われる。日本GPでは2ストローク勢も装着していた。



スコルパSY250Fロングライドとスコルパ社長フィリップ
出荷が遅れていることに恐縮している雰囲気はないけど、それは彼がフランス人だから。

 さて、このロングライドを含め、レース仕様のSY250Fも、一般デリバリーは少々遅れる見込みだという。全日本選手権、SSDT、世界選手権と、次々にデビューを果たしているヤマハのDOHC 5バルブエンジンは、日々大きな進歩を見せてベストセッティングに近づいているが、不特定多数のユーザーがすんなり乗り出すには、もう少し大事にセッティング作業をすることになったものと思われる。世界選手権で5位に入る実力を持っていることで、そのポテンシャルは明らかなので、次は誰にでも乗りやすい仕様を求めて、最終仕様が模索されることだろう。新たなデリバリー時期は、この秋から冬になるということだ。DOHCトライアルマシン、しばしお待ちを。
 一方、驚異的価格で登場したTY-S125Fロングライドのほうは出荷が始まっている。ご覧のとおり、長いシートは二人乗りにもお似合いの長さを持っている(あんまりさわやかではない二人がまたがっているが、ロングライドのシートはこんな二人でも余裕たっぷりに受け入れてくれた)。
 もちろんこのマシンにはタンデムステップはついてないし、二人乗りに耐えるかどうかの確証はないので、二人乗りうんぬんはほんの冗談だけど、座るところのないトライアルマシンというイメージから、曲がりなりにも二人乗りできそうなマシンが登場した意義は大きい。

 ただしこのマシンにもちょっと問題あり。タンクがフロンとフォークにあたって、ハンドルが最後まで切れない。トライアルマシンとしてはあり得ないハンドル切れ角で、トライアル的なターンをしようとするとハンドルが切れなくてあわてることになる。だが、山遊びバイクとしてはなんとかなりそうだ。セローと同じくらいのハンドル切れ角で、セローよりも軽量で取り回しのよいマシン、タンクを交換するなり細工するなりすれば、トライアルマシンとしての戦闘力をフルに発揮する(2.9リットルタンクを装着するか、フロントフォークの三つまた部分に干渉する部分を苦労してへこませるなどの策あり)。
 とはいえ、トライアルマシンの中には、ハンドルストッパーを調節式として、ハンドル切れ角を規制しているモデルもある。トライアル走行に慣れていない人にとっては、大きく切れるハンドル角は不安定なばかりで乗りにくいものとなってしまう場合もある。125Fロングライドも、本格的ポテンシャルを秘めたトライアルごっこマシンとしてみれば、今の仕様もまんざらではないのかもしれない。
 いずれにしろ、よくも悪くも、スコルパのお仕事に、目が離せない。

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